島添龍馬(文学作品のすすめ)

ミステリーを主にさまざま文学作品をご紹介していきます

赤木和重・岡村由紀子「「気になる子」と言わない保育」 再レビュー

とてもユニークな構成。「気になる子」の側から世界を見ると…

この本、とりわけ、色々な「気になる子」のケースが合計22個も扱われる第1部の構成が良かった。例えば「話を聞かなければいけない場面でいつもおしゃべりしてしまう」子のケース。どう対応すると良いと思いますか? 

この本では、まず「お約束表ルールを作る」「毎日決まった時間に一対一で話を聞く」「「話す人マイク」を使う」という、一見良さげで実際にもよくある対応の仕方が提示され、それに「本当に?」と問いが返されていく。そして、「話を聞かなければならない場面でのおしゃべり」を、子どもの側から見てみるとどういう場面なのかが考察される。さらに、その考察を生かして、単に大人側の都合を押しつけるのではない、別の解決法をさぐっていくのだ。

この「でもね、子どもの側から見てみると…」という部分、本当にドキッときた。絶賛子育て中の僕も、よくイライラして子どもを叱ってしまう。「人の話は聞かず、こちらの話の途中に割り込んでくる」「何度言っても片づけができない」「何度注意しても同じ失敗を繰り返す」…そうなるとついつい否定的な言葉が増えてしまうのだけど、僕の言葉には、結局は自分の側の都合だけで、子どもの側の論理を考えている場面が少ないなあと反省した。なぜ彼がそうするのか。彼がそうしてしまう気持ちは何なのか。そこをまず考えないといけないなあ…。

豊富な実践例を理論づける第2部以降も勉強になる

第2部では、第1部での提案の背後にある理論が説明される。ここでも鍵は「子どもの側から世界を見ること」。「気になる子」の「気になる部分」がどこから生じているのかを、子どもの視点に立って考えない限り、小手先の技術や語りかけの言葉では、結果は良くならない。まずは「子どもの側に立つ」ことが大事! その上で、次の5つのポイントが挙げられている。特に、「子どもは自分で変わるのであり、変えることはできない」というのは、日頃思っていてもつい忘れがちなこと。

発達の各時期に応じた子どもの考え方・感じ方がある(知識は大事!)

発達とは自己運動である(子どもは自分で変わるのであり、変えることはできない)

子どもが変わるきっかけは、子どもたちのなかにある

問題行動の裏にある子どもの思いをつかむ

「気になる子」の気にならないところを見る

そして、こんなことも書いてあった。「保育」をそのまま「学校教育」に、「あそび」を「学習」に変えても通用するのではないかと思わされる言葉だ。

「気になる子」を含む子どもたちの、面白くてたまらないあそびを作る保育の視点は、次の3つにまとめられます。

1つは、子ども主体のあそびです。子ども主体のあそびを引き出す手がかりは、そのあそびに子どもが「興味・関心」を持っているかどうかにあります。興味・関心のあるあそびこそ、子供は自主的・自発的になります、あそびの主人公になります。

2つめは、子どもの発達課題を明らかにし、個を深く捉えることです。子どもの不得意なこと・苦手なこと・思い・考えなどを理解することは、あそびを面白くする指導の手がかりやヒントとなるからです。

3つ目は、子どもの思いや考えに共感できる大人や子どもの関係づくり(人間関係)に注目することです。あそびの面白さは、保育者・クラス・仲間・友だちなどの人間関係によって変わってきます。言いたいことを言って、違ったら話し合って、安心でき、ほっとする人間関係のなかでこそ、遊びは豊かになっていきます。(p129)

これらの原則に引き続き、保育の場面でのもっと具体的な言葉がけの例も、引き続き紹介されている。大人の評価語を使わずに、相手が気持ちや成長を実感できる言葉を使うとか、「◯◯しないと遊べないよ」ではなく「◯◯したら遊ぼうね」とか。もっと詳しくは本書を読んでください。

ライティング/リーディング・ワークショップとも重なるなあ…

この本、今の僕にはとても響いた本だった。親として自分の行動を反省させられた、というだけではない。翻訳した『イン・ザ・ミドル』でアトウェルが強調していたのも、これと全く同じことだったからだ。

この本の最初の章の扉。そこには、「私たちが教える論理が、子どもたちが学ぶ論理と同じとは限らない」というグレンダ・ビセックスの言葉がある。アトウェルは、ジェフという「気になる子」に出会い、それ以降、子どもの論理で自分の授業を見直すことをした人だった。この本の保育者とやっていることは同じ!

「私たちが教える論理が、子供たちが学ぶ論理と同じとは限らない」:アトウェルの人生を変えた失敗とは。

2017.07.22

また、「言葉がけ」に注目したピーター・ジョンストンの「言葉を選ぶ、授業が変わる!」も、この本に深い関係がある。表面的な言葉がけだけでなく、その背後にある教師(保育者)の考え方が大事という点でも同じだし、でもこの本の言葉遣いを真似ることで自分の考え方も少しずつ変えられるのでは、と思う点でも同じ。

[読書] 語りかけを通じて、授業と、自分を変える。ピーター・ジョンストン『言葉を選ぶ、授業が変わる!』

2018.07.30

インクルーシブ教育について学ぼうと思って読んだ本は、ライティング/リーディング・ワークショップについての本と同じことが書いてある本だった。この本の姿勢、本当に大事だと思います。でも、全然できていない。言葉遣いを真似することで、自分の物の見方を変えていこう。こういう風に読書体験がつながっていくのも、面白い!