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ミステリーを主にさまざま文学作品をご紹介していきます

『どんなに弱くても人は自由に働ける』阪口ユウキ(著)感想

いまの生活に違和感を抱いているのであれば、一読をおすすめします。

ただし、本書はあくまで人生の道筋の例を一つ示してくれるものです。

うつ病との闘いの詳細や、PC一台で稼ぐためのノウハウが詳しく書かれているわけではないので、そこは注意が必要です。

あくまでも、こういう生き方もできるよ、と紹介してくれる本です。

本書の中では、いくつもの出会いが出てきます。釣り人しかり、元ヤクザしかり。タイで一目惚れしたという女の子もいました。それらの出会いが、筆者の考え方を変えたり、行動を起こす決意に繋がるきっかけを与えてくれたりしたんですね。

行動力はもちろんですが、うつ病を患った筆者が変わる最大のきっかけとなったのは、人との出会いだったように思います。

やはり、他人の影響というのは大きいですね。背中を押してくれる誰かと出会えることは、貴重です。

一人の数年分の人生が一冊にまとめられているため、すべての出来事が描写されているわけではありません。そのせいか、どこかとんとん拍子に話が進んでいるような錯覚をおぼえますが、これ以外にも、筆者が数多くの困難を乗り越えたであろうことは想像に難くありません。

誰の助けも得られず、わずかな貯金がつきるまでに、自分で自分を養えるだけの稼ぎを生み出す――その姿勢は、まるで背水の陣のようだと思いました。安定している、逃げ場所がある、そのような状態では甘さが生じる。尻に火がついたからこそ、筆者は自分の思い描いていた目標地点にたどり着けたのでしょう。

もちろん、安定を取るか博打を打つかは自分次第、自己責任です。

しかし、壊れるぐらいだったら、いまの生活をすべて投げ出してみるのも選択肢の一つだと思いました。

人と出会えなくても、本とは出合える
日々の中で、自分の人生に大きな影響を与えるような人物に出会うことは難しいかもしれません。

自分の生活の範囲が決まっている以上、出会う人もある程度決まってきてしまいます。筆者が体験したような、人生を変えるほどのきっかけとなる出会いを経験することは、そうそうできないでしょう。

しかし、本と出会うことはできます。

筆者が受けた言葉を、文字を通して、私たちは本から受け取ることができるのです。もちろん、直接言われたものとは重みが違うでしょう。それでも、誰かの人生を変えた出来事を知ることはできます。

私はいま、ウェブ上で一つの資産を作り上げたいと思い、こうして雑記ブログを立ち上げました。漫然と地方の田舎で働き続ける生き方があと何十年も続く未来を想像してしまい、背筋がぞっとし、何か少しでもいいからこの状況を変えたいと思ったからです。

実際に行動に移すきっかけとなったのは、同じような境遇から別の道を模索した方の書いた文章でした。それを読み、私は感銘を受けました。

本書もそうです。

家と職場を往復するだけの日々にもやもやとした気持ちを抱いている私に、この本は別の生き方、働き方を提示してくれました。

私はまだ、人生のどん底を知りません。だから、自分の好きなことをして生きていきたいなんていう甘い考えを抱けるのかもしれませんが、所詮は自分の人生です。誰から何と言われようと、自分の生き方は自分で決められます。

本書は、私自身の生き方を見直す貴重なきっかけとなりました。

最後に
茨の道ですが、自分の思い描いたライフスタイルを実現できる可能性がゼロではないということを、この本は教えてくれました。

小説仕立てなので、非常に読みやすい内容となっています。

もし、いまの生活に違和感をおぼえている方がいらっしゃいましたら、ぜひこちらの本をご一読ください。こういう生き方、働き方もあるんだな、と一つの指針を知ることができます。