本棚

ミステリーを主にさまざま文学作品をご紹介していきます

2022-10-01から1日間の記事一覧

赤木和重・岡村由紀子「「気になる子」と言わない保育」 再レビュー

とてもユニークな構成。「気になる子」の側から世界を見ると… この本、とりわけ、色々な「気になる子」のケースが合計22個も扱われる第1部の構成が良かった。例えば「話を聞かなければいけない場面でいつもおしゃべりしてしまう」子のケース。どう対応する…

今井むつみ、他『算数文章題が解けない子どもたち』再レビュー

独自に開発したテストの分析が中心 本書は、筆者たちが開発した「ことばのたつじん」「かんがえるたつじん」という2つのテストの設計・実施・分析の報告である。そのせいか文体も一般書というよりはやや報告書チックなのだが、内容は面白い。2つのテストの…

松岡亮二「教育格差」再レビュー

義務教育での学力格差の固定 この環境差は、幼稚園、そして小学校に入ってもそのまま維持されます。高SESの家庭は蔵書量が多く、子どもの年間読書量も多い。経済力の影響を排除しても、高学歴の父母ほど読書しており、父母が読書量を増やすと子どもの読書量…

西尾実の国語教師論再レビュー

「自分本位」「子供本位」への厳しさ これを読むと僕なんかは典型的な「第二の段階」だと思うのですが、こういう手合いに対して西尾先生は実に手厳しいのですね。 そういう教育者は、生徒の生命を伸ばしそれを力強くすると思いながら、実は教師自身の自我を…

鈴木宏昭『私たちはどう学んでいるのか』 あらすじ編集

鈴木宏昭『私たちはどう学んでいるのか』をとても面白く読んだ。一言で言うと「教師が予定したように生徒が学習するなんてありえないよ。それは「教育ごっこ」に過ぎないよ」と主張する本で、それを踏まえて、じゃあ人間はどう学習するのか、を「創発」をキ…

今井むつみ『学びとは何か』

物事に熟達した人、いわゆる「名人」や「達人」たちは、僕たちと何がどう違うのだろうか。それを考えるヒントになる本。ある分野で熟達しようとする人、そして「熟達を目指す人=探究人」を育てる立場にある人におすすめの本。 「臨機応変な判断」ができるの…

『子どもに学ぶ言葉の認知科学』

おもしろ言葉ネタから、認知の仕組みの入り口まで 例えば、本書では鏡文字や漢字の書き取りミスについての章(第2章)があるが、もちろん本書は「こんなミスがあって面白い」では終わらない。子どもの漢字の覚え間違いには、漢字の字素=パーツ(部首や音符…

『言葉を選ぶ、授業が変わる!』

教師の語りが教室をどう変えるか 「教師の語り」に注目した本はおそらく数多いのだと思うが(あまり読んだことがないのでただの推測です…)、この本は「こう生徒を動かしたければこう話せ」的な本ではない。教師自身があまり意識しないような言葉のはしばし…

荻上チキ「いじめを生む教室」。

荻上チキ「いじめを生む教室」は、そのタイトルの通り、「いじめを生みやすい教室の要因」を分析し、いじめを減らす環境をどう構築するかを提言している。いじめにまつわる様々な俗論を排して、これまでの調査や研究成果に基づいて論じている点が特徴で、「…

サイコパス 秘められた能力とは?一体何?

サイコパスという単語を耳にすると、 凶悪殺人犯変質者恐怖このようなイメージを私たちは抱いてしまいます。 しかし、世の中のサイコパスたちはみんな恐ろしい存在なのでしょうか? そこでサイコパスの能力について解説されている本を今回は紹介します。 本…

【要約・書評】ハワード・マークスサイクルの原理再レビュー

本書のポイントは市場にはさまざなサイクルが存在していることです。 景気サイクル企業の利益サイクル投資家の心理サイクル信用サイクルこのようなさまざなサイクルが複雑に絡み合い、株価などを形成しています。 投資家は企業分析や会計の知識をつけると有…

『護られなかった者たちへ』中山七里(著)感想

感想聖人や人格者と呼ばれる人間たちが、なぜ餓死という残酷な方法で殺されたのか。 真っ先に興味を引かれたのがこの部分でした。 最初に殺されたのが社会保健事務所職員だったことから、事件の背景に貧困や福祉が絡むだろうことはすぐに予想がつきます。読…

『ししりばの家』澤村伊智(著)感想

感想砂の積もる家本作の舞台となるのは、東京郊外のとある一軒家です。 本来、もっとも安心できる場所であるはずの家。その家が、怪異により異常空間と化してしまいます。 家の床一面に積もった砂。 しかもその家に住む平岩敏明は、砂の存在をまるで気にしま…

『などらきの首』澤村伊智(著)感想

ゴカイノカイ梅本が所有する貸事務所のうち、なぜか五階だけ入居者に短い期間で解約されてしまう。入居者の話によると、子供の声で「痛い、痛い」と聞こえ、さらには自分の身体に痛みが走るという。壁の裏や床下を確認したが、異常は見当たらない。怪奇現象…

書評「Nozbeクリエイティブ仕事術」 by 倉園佳三

この本は「公式ガイド」という立場を採っているが、Nozbeの機能を網羅的に説明した本に留まっていない。 「はじめに」で著者倉園氏が説明しているとおり、GTDの各ステップをNozbeの機能に当てはめて説明する形を採っている。 そのため、本書をしっかり読み込…

『écriture 新人作家・杉浦李奈の推論』松岡圭祐(著)感想

感想リアルな新人作家の日常本書の特徴の一つは、なんといっても出版界の微に入り細を穿つ描写の妙! 新人作家に対する出版社の扱いの雑さや、印税にまつわる話など、小説家のリアルな様子が描かれています。 小説を読むことはあっても、小説家と出版社のや…

『ずうのめ人形』澤村伊智(著)感想

迫り来る呪いの人形本書は、現実パートと、原稿の物語パートのふたつが交互に描かれていく形がとられています。 物語の発端は、ライターの湯水清志が自宅で不審死を遂げたことです。湯水の両目は抉り取られていました。 そして、湯浅の自宅からとある原稿を…

書評「クラウドHACKS!」 by 小山龍介

本書の凄さはサブタイトルに垣間見ることができる。 「同期と共有でラクチン・ノマドワークスタイル」 本書では、著者小山氏がどのようにクラウドを活用しているかという紹介もさることながら、クラウドを使った結果、どのように仕事の効率が上がり、どんな…

『どんなに弱くても人は自由に働ける』阪口ユウキ(著)感想

いまの生活に違和感を抱いているのであれば、一読をおすすめします。 ただし、本書はあくまで人生の道筋の例を一つ示してくれるものです。 うつ病との闘いの詳細や、PC一台で稼ぐためのノウハウが詳しく書かれているわけではないので、そこは注意が必要です…

『公務員、中田忍の悪徳』立川浦々(著)感想

今回紹介する『公務員、中田忍の悪徳』は、第15回小学館ライトノベル大賞《優秀賞》受賞作品です。 作者は立川浦々たちかわうらうら先生。 イラストは楝蛙おうちかえる先生。 内容をざっくり説明すると、やべーやつがやべー思考回路でやべーことをするやべー…

瀬戸賢一「書くための文章読本」

日本語の悩みのタネ、それは文末 ある程度文章を書きなれているのに文末表現に苦労している、という方は少なくないはず。というのも、文末に動詞・助動詞がくる日本語は、文末表現のバリエーションがそもそも豊かではありません。基本的には、次の5つしかな…

瀬戸賢一「書くための文章読本」

日本語の悩みのタネ、それは文末 ある程度文章を書きなれているのに文末表現に苦労している、という方は少なくないはず。というのも、文末に動詞・助動詞がくる日本語は、文末表現のバリエーションがそもそも豊かではありません。基本的には、次の5つしかな…

ナンシー・アトウェル

ナンシー・アトウェルってどんな人? ナンシー・アトウェルはアメリカを代表するライティング/リーディング・ワークショップの実践者の一人です。もともとは公立中学校の先生で、In the Middleの初版の売り上げをもとにしてメイン州に自分の学校「教師と生…